箪笥
2020/11/09

「加茂の旅」2020年10月-新潟県加茂市を訪ねて-

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出張日 令和2年10月28日(水)29日(木)

新潟県加茂市は日本最大の桐箪笥の産地です。しかし桐箪笥に興味がある方やお持ちの方には周知の事ですが、なかなか馴染みがない方もおられると思います。私は10年前まで別の会社で洋家具を扱っておりましたので、「桐箪笥=新潟県加茂市」という認識は、箪笥の松本で桐箪笥に携わってから、そして知識を深めて参りました。

今回はコロナ禍での桐箪笥の産地の現状を確認すべく、加茂に行きました。そして今後も加茂の桐箪笥工場と連携を取りながら、加茂の桐箪笥の繁盛を願うと共に、お客様には、より一層良質な桐製品のご提案をしていく次第です。

前回の加茂出張で伺うことの出来なかった5社を含めた9社に伺い、私自身初めて伺う工場も有り、それぞれで貴重な話、加茂の歴史も聞けて有意義な2日間でした。

1日目の訪問先は下新原、2日目は松本義之助が取材内容をレポート致します。

 

10月28日(1日目)

①(有)野本桐函製作所

 新潟県加茂市青海町2-14-7

 TEL:0256(52)1513

 社長 野本 剛氏

加茂桐箪笥伝統工芸士 野本 光男氏

現在30代の桐箪笥職人が2名で、社長と野本光男氏の指導のもと技術の習得に努力しており将来も安心できる会社です。

桐箪笥以外では大型で大量生産が可能な機会を何年も前から導入され小物等にも力を入れています。

思い函を製品化され販売されていましたが、今回ミニ仏壇として名称を変えて販売したところ思いのほか多くの注文が入り大型機械が大活躍したとの事でした。

大型機械の導入でホテル用什器、店舗家具等の特注もお取り扱いがあり大忙しです。

 

②高橋芳郎タンス店

 新潟県南蒲原郡田上町かわふね工業団地1694

 TEL:0256(52)6570

 社長 高橋 芳郎氏

親子、兄弟で国産桐にこだわる桐箪笥職人で伝統工芸士。

桐箪笥の材料になる桐の木を自社の車で伐採から運搬、乾燥、製造までを全て行うのが特徴の会社です。

桐のテーブルが出来る最高級の1枚板が多くあり天井にも乾燥させてありました。

桐のダイニングテーブルは人の心を優しくしてくれる逸品です。

最近は古くなった桐箪笥の更生のご依頼もあり毎日が忙しいとのことです。

 

③(有)桐の蔵

 新潟県加茂市神明町2-4-10

 TEL:0256(57)4337

 社長:桑原 賢氏

創業72年、3代目社長のもと若い社員も多い会社です。

伝統工芸士、横山氏・鈴木氏が弊社の主力商品を製作して頂いております。

古くなった桐箪笥の修理・更生作業も最近はオイル仕上げ等を全国に提案されています。

全国の展示会も来年2月より東京から計画されているとの事です。

 

④(有)やまだ工芸

 新潟県南蒲原郡田上町舟河甲1045

 TEL:0256(52)1930

 社長 山田 伸一氏

創業45年、3代目社長を中心に活躍の会社です。

桐箪笥、民芸調の家具の注文があり、木地製作、塗装までの作業を全て行われる会社です。

弊社では時代仕上げ・ウレタン仕上げの小袖タイプを特に多く製作して頂いております。

旅館、ホテルの什器の製作、ダイニングセット、リビングセット等にも熱心に取り組まれ毎日忙しいとのことです。

 

⑤朝倉家具

 新潟県新潟市南区茨曽根2574

 TEL:05(375)5111

 社長 朝倉 泰則氏

30代の専務さんを中心に若い社員の意見が反映された会社です。

伝統工芸士の大橋氏・藤田氏の2名が桐箪笥製造に携わり、若い社員への指導も盛んに行われています。

最近はブナ、クリ、カバサクラ材を使用したキャビネット、円卓のテーブル、椅子、カウンターデスク等の注文も入り若い職人男女4名で作業を行っております。

生協、ネットカタログ通販にも力を入れ、ランチョンマット、桐の米びつ、桐のまな板等、手作りの小物の製造も忙しいとの事です。

若い職人が多く、将来が楽しみです。

 

 

10月29日(2日目)

①田沢木工所

 新潟市秋葉区千代田320-1

 TEL:0256(38)2831

 社長:木工一級技能士 田沢 正一氏

            田沢 松男氏

田沢 正一社長

箪笥の松本と田沢木工所とは、田沢氏が20代の頃からですので、45年来のお取引となります。

加茂には多くの桐箪笥屋が在りますが、他にはない田沢木工所の特徴として、福島県の本会津桐を100%使用していることです。会津桐は目が太く、硬くしっかりしていますが、素直な木目が少なく、短尺ものも多いので、歩留まりが悪い=材料のロスが多い木材です。それでも田沢氏は、お客様に最高級品質の桐箪笥を伝えたいという思いで、総会津桐で桐箪笥を製作しています。また、一定の良い品質が、ご購入後も続くように、数本の会津桐から良いところを選ぶのではなく、1本の会津桐で側板、底板、柾を組むようにしています。その為、同じ桐から製材された会津桐はまとめて管理しています。

同じ木であれば、樹齢も同じで、製品になった後、狂いが少ないです。ただしそのような条件の良い会津桐は、中々存在しない上に、存在しても費用が掛かるでしょう。田沢氏の所有する会津桐は大変貴重です。

基礎管理の重要性、材料の使い方次第で、一定の品質に繋がると田沢氏はおっしゃられていました。

 

会津桐(元々保育園舎の工場は、天井が高く、桐材を屋外乾燥した後は、室内で保管しています。)

今回玉杢が奇麗な会津桐整理箪笥が在りました。

色塗りして今後ショールームに並ぶ予定です。

 

②茂野タンス店 創業94年

 新潟県南蒲原郡田上町原ヶ崎30-1

 TEL:0256(57)3610

 代表取締役 茂野 克司氏

茂野タンス店では、桐たんす教室を開催しており、今年で8年目になります。

12回コースで木取り、カンナ刃研ぎまで行うとの事、中には遠方からお越しになる方や削ろう会全国大会で、優秀な成績を収めた方もいらっしゃいます。

親子で参加できる教室もありますので、興味ある方は是非お問い合わせされてみてはいかがでしょうか。

茂野氏は環境保全(エコ)にも取り組んでおります。

 

以前はおがくずを焼却していましたが、今は加茂市を通して、家畜業者で使用されています。CO2削減ですね。

桐のカンナくずは、加茂山リス園でリスの寝床として再利用されています。気持ちがよさそうですね。

端材は焚き付け用として引き取ってくれるそうです。使い道があるのは良いことです。

 【室内保管国産桐】

 【工場内】

 【小物材料】小物製作も行っています。

【絵画箪笥】海外向け、海外の家具事情にも造詣が深い茂野氏ならでは)

 

③株式会社イシモク

 新潟県加茂市加茂新田10007-3

 TEL:0256(53)4111

 代表取締役社長 山口 智子氏

桐材を活かした家具を中心に小物や床材まで、トータルに空間提案が出来る商材を扱っているイシモクは、桐タンスが中心の加茂においても一目置かれる存在です。現代のライフスタイルにフィットした商品展開は、桐の可能性を広げるものと期待しております。また山口社長の先見性は、目を見張るものがありまして、私も大変勉強になりました。

以下、イシモクショールームをご紹介します。

【桐ダイニングセット】

【桐リビングセット①】

【桐リビングセット②】

【階段は全て桐材】桐の温もりを感じられます。

【桐の端材詰め放題】

【ゆら、ゆら、ゆらり椅子】

 

④鈴木石太郎タンス店 創業明治20年 4代目

 新潟県加茂市新町1-6-7

 TEL:0256(52)0994

 伝統工芸士:鈴木 浩市氏

       鈴木 浩昭氏

鈴木石太郎タンス店は創業130年、加茂の桐箪笥の老舗であり、今や加茂で一番歴史のあるタンス店です。創業時は、建具と箪笥を扱っていました。

鈴木氏のご自宅では芸術的な美術建具を拝見しました。当時から1つとして修理していない程、しっかりしているそうです。

 

鈴木石太郎タンス店の特徴としましては、製作から仕上げまで一貫して2人の兄弟が行っていることが挙げられます。仕上げに関しては砥の粉、時代、オイル仕上げと、自社で幅広く対応できるのは強みとなります。

また最近では桐の反響を活かした「桐エコスピーカー」も評判で、左右に組子をあしらったモデルは、多方面から注文を頂いているそうです。

加茂全体に言えますが、こうした桐箪笥の材料を活かして、桐小物製品を扱う工場が増えているのを、実感しました。

 筆:松本 義之助/下新原 亨

 

 

 

 

 


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